ニホンジカをご存知でしょうか?
その見た目の可愛らしさからは想像つかないかもしれませんが、実は生態系や農林業、私たちの生活までに深刻な被害をもたらしています。
平成29年度のニホンジカやイノシシなどによる農作物の被害総額は年間約164億円もあります(参考:全国の野生鳥獣による農作物被害状況について・農林水産省)
今後も対策を継続し、ニホンジカの個体数の管理の徹底に努めなければなりません。
ニホンジカとは
ニホンジカは、日本国内だけでなくロシアや中国、台湾など東アジアに多く生息しています。
また、熱帯林、落葉樹林、寒帯草原、湿地帯や高地など幅広い環境に適応できます。
日本では、北海道から九州の森林地帯、原野、雑木林などに生息していますが、最近では住宅地などでも目撃されるケースもあるようです(参考:全国のニホンジカ及びイノシシの生息分布拡大状況調査・環境省)
イノシシの生息数は近年横ばいではありますが、シカは年々増加しています。
体長は100cm~180cm程度であり、体重は40kg~100kg程度のとても大きい動物です。
ニホンジカは草食性で、草だけでなくほとんどの植物をエサとして食べ、環境や時期によっては樹皮や菌類も食べます。
繁殖期は秋で、繁殖力は高いです。環境にもよりますが、1歳の雌ジカから妊娠能力を持ちます。
妊娠から7ヶ月間ほどで出産でき、ほぼ毎年出産するのでニホンジカの繁殖能力は異常です。
この繁殖能力が、近年日本で起きているニホンジカの急増の原因と言えます。
ニホンジカが及ぼす被害
ニホンジカの急増により様々な被害が広がっています。その一つが生態系の破壊です。
ニホンジカは体が大きいため、それを維持するために毎日多くの草を食べます。
ニホンジカが森林の下草や樹皮を食べ尽くすと、森林の再生が難しくなり、やがてなくなっていきます。
すると、下草を住処にしていた生物の居場所がなくなり、その生物を食べていた生物にも影響を及ぼすことになります。
また、樹皮を食い尽くされると、木は枯れ、土壌が悪くなり、土砂崩れなどの原因にもなるのです。
農林業にも被害が及んでいます。
森林にエサがなくなると、ニホンジカは人里に降り、農作物を食い荒らします。
ニホンジカだけではありませんが、日本の害獣による農作物被害は年間約164億円もある状況です。
そのほかにも、夜間道路に出没したニホンジカが自動車と衝突し、乗車していた人が死亡する交通事故もあります。
ニホンジカ対策
ニホンジカ対策として現在行われているのが、狩猟や被害防止対策、生息環境管理などがあります。
狩猟は、猟師が山中に入りニホンジカやその他の害獣を猟銃や罠などで捕獲することです。
被害防止対策としては、侵入防止柵や電気柵などを設置し、農地への侵入を防ぎます。
生息環境管理は、農地周辺に放任されている果樹の撤去を行ったり、農地に野菜クズなどを捨てないようにすることで、副次的なエサ場をなくします。
また、放置された農地を定期的に手入れすることで、ニホンジカと人間の棲み分けをすることができます。
現在、国の政策として実施している「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」により、ニホンジカを含む鳥獣の減少が確認されています。
減少はしているものの、まだまだ農作物などの被害総額は高い水準にあり、森の生態系も回復しているとも言えず、その効果は十分ではありません。
まとめ
繁殖力の高いニホンジカの個体数を管理することは、手間とお金が掛かります。
今後は「オオカミの再導入」のように、人の手を加えず、ニホンジカの個体数を管理する考え方も必要になってくるでしょう。