昨今、メディアでシカやイノシシ等の害獣による農作物への被害をよく目にします。
国や市町村、地域住民が実施した狩猟や柵の設置などの対策により、その数は年々減少傾向ではありますが、依然として高い推移となっています。
鹿や猪などが増えすぎた事による害獣被害により、生態系の悪化だけでなく、耕作放棄・離農などの問題にも繋がります。
鹿の個体数は年々増加している
害獣の定義とは、
・被害を及ぼす原因となっている動物や種
・または、その可能性がある動物や種
を指します。
その種類は多くいますが、害獣被害の大半を占めているのはシカとイノシシです。
イノシシの生息数は近年横ばいではありますが、シカは年々増加しています。
シカは生後1年で出産可能となり、毎年子どもを産むので増殖率は馬鹿になりません。さらにイノシシは多産であり一度に5頭以上産むので、このまま何も対策をしなければ、個体数が減少することはまずないでしょう。
そして、地球温暖化も生息数の増加の原因となっています。死亡率が高いとされている冬の気温が上昇することで、冬を越す害獣が増加したと考えられます。
また、日本の森林面積の増減に変わりはないのですが、温暖化の影響で以前より草木が生い茂り、害獣はたくさんの栄養を蓄えることができるようになりました。その結果、害獣が増えたのです。
害獣による農作物の被害状況
被害の場所は、地方部の中山間地域を中心に深刻化、広域化しています。
平成29年度の被害総額は約164億円で、年々減少傾向ではありますが、いずれにしても高い水準です(参考:全国の野生鳥獣による農作物被害状況について・農林水産省)
個人で害獣駆除をしようとすると、どのくらいの費用がかかるでしょうか?
まず、市役所や警察署などの公的機関に「害獣駆除」を依頼しても、十分な対応をしてもらうことはほとんどないでしょう。膨大な費用がかかるからです。
個人の場合、害獣駆除を専門に取り扱っている民間の業者に依頼する必要がありますが、おおそよ10万円ほどかかります。
しかし、自宅に檻や柵などを設置する場合、政府からの補助金がでる場合があります。
ですので、檻や柵の設置を検討しているのであれば、最寄りの役所に相談してみるのがいいでしょう。
獣害対策とは
現在実施している獣害対策の方法はいくつかありますが、その中で一番大切なのは「予防」ではないでしょうか。
農作物を狙う害獣は美味しい餌を覚え、その個体は同じ場所に繰り返し現れます。
なので、美味しい餌を覚えさせないために、農作廃棄物の場所の確保や害獣が人里に近づかないための土地の整備などの対策も必要です。
また、現在も狩猟は行われており、狩猟による捕獲数は増加傾向にあります。
これは、ジビエ肉などが注目され始めた事で、捕獲した害獣の肉の単価が上がったことで、ハンターは単価目当てで多くの害獣を狩ったからです。
しかし、ハンターの高齢化は進んでおり、今後は捕獲数も減っていくことでしょう。
他にも、地域の取り組みとして罠や柵の設置を実施していますが、あまり目立った効果は出ていないようです。
前述したように、個人での取り組みとしては柵などを設置する事くらいになります。
まとめ
2013年に環境省・農林水産省が「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を策定し、2023年までにシカ・イノシシの生息数を半減させることを目標にしています(参考:抜本的な鳥獣捕獲強化対策・環境省/農林水産省)
ただし、対策の主は捕獲による個体数の減少ですが、ハンターの高齢化・地方の若者人口の減少などにより限界があります。繁殖の勢いは変わらないので、抜本的な解決には至らないでしょう。
アメリカで実施され、生態系の回復に成功した「オオカミの再導入」など、害獣が人里に降りてこないようにする実験を日本でもやってみる価値はあるのではないでしょうか。